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「日本の遠い1点」
2006-06-19 Mon 22:11
 「日本、一点が取れない!!」

 そう叫ぶのは、あるラジオのサッカー解説者である。それはデジャヴのように聞こえる。

 僕はひょんなことから(それはとてもポジティブな意味のひょんなこと、であるのだけど)広島の山奥で、会社のトラックの座席にすわり、ラジオでそれを聞く。いわゆる出張というやつである。

 その解説者はサッカーを言葉で表現することを止めようとしない。日本がいくら攻められようが、攻めようが、彼はそれを止めないのだ。たとえそれが、正確さを欠いたものであったとしても。

 そんな彼の横に、城がいる。コメントをする。城はいったいどんな気持ちなのだろう。柳沢がシュートを外すたびに彼は何を我慢し、そしてどのように自分のなかでの客観的コメントを探し出すのだろう。

 「川口止めたっ!!」

 僕は社員さんの眠る姿を横目で流し、小さなガッツポーズをする。

 時間は無情にも進み続け、ラジオのサッカー解説者はこう繰り返す。

 「日本、1点が取れません!!日本、1点が遠い!!」

 僕は小さいときに、この実況をテレビで聞いたことがあるのを思い出していた。城のオーバーヘッド、中山のトラップからの左足。

 4トントラックのラジオは日本がクロアチアと引き分けたことを僕に伝え、僕はそれを社員さんに伝えた。あかんかったんかぁ、と社員さん。僕はそのままトラックの荷台に移り、くさい寝袋に入りそのまま寝てしまった。
 

 NHKの番組でのやり取り。

 「城さん、日本の決定力不足についてどのように思われますか?」

 城は言う。城は柳沢をかばわなかった。偉い人だ。

 「国民の皆さんが悔しいのと同じように、僕も悔しいです。」

 僕も思う。

 「城がくやしいように、僕もくやしいです。」

 ブラジル戦。日本がたくさん得点して、城が無神経にも

 「やっぱり決定力は大事ですね!!」

 と言って国民を笑かせてほしいと、僕はそんなふうに思うのである。

 

 
 

 

 
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